ある日突然無人島に1人置かれたら ①
ある日、妙な感覚に襲われて起き上がり、目を開くとそこには果てしなく続く水平線と、青々と茂った木々が風に吹かれて揺れている。
驚いて周囲をウロウロしてみるけれど人の気配はせず、聴こえるのは鳥の鳴き声と、風や波の音だけ。
どうやら、ここはどこかの無人島のようだ。
そして、当然ながら、自分以外の人間はここには存在しない。
海を見渡しても、他に島や大陸らしきものは見えないどころか、船の姿すら確認できない。
服は着ているけれど、スマホなどの連絡手段は一切ない。
全く不可解だけど、どうやら夢ではないらしい。
さて、もしもこんな時、自分だったらどうするか、、、
ある日突然無人島に1人置かれたら
ひとまず、半分パニックになりながらも、状況を整理する。
とりあえず、ここは無人島であるということは確認できたが、おそらくそのことによって、まもなくやり場のない大きな不安感が襲ってくるだろう。
だって、空は雲ひとつなく晴れ渡っていて、遠くの水平線も見えるのに、どこを見渡しても丘は見えず、船の姿も1隻も確認できないような状況なのだから。
出せる限りの大声で叫んでみても、それは風と波の音に虚しく消されていく…。
どこにも助けを求められない。
今地球上のどこにいるのかも分からない。
ひょっとしたら日本じゃないのかもしれない。
このままずっと誰もやってこなかったらどうしよう。
そんな次々と襲ってくる不安感に苛まれ、パニックになって心臓をバクバクさせながらながらも、僕は今の状態を正確に理解するために、状況を1つ1つ整理していこうとするだろう。
まず、寝る前の前日は普段通り朝から仕事をし、18時頃に家に帰り、19時頃に夕飯を食べ、散歩や軽い筋トレなどをした後に、21時頃に風呂に入り、その後はぼーっとしながら過ごし、23時には眠りについた。
そんな、いつもと変わらない日だった。
けれど、何故か目覚めたらこんなところにいる。
そして、この無人島の近くには大陸や島などはなく、船の姿も見えない。
時間は、方角が分からないので正確には分からないが、太陽が真上にあるため、お昼頃だと思われる。
風は体感だと風速4〜5mくらい。弱すぎず、強すぎずくらいか。
気温はかなり高そうだ。体感だと25℃以上はありそう。
動物の姿はまだ確認できない。鳥は姿は見えないが、鳴き声が聴こえるので、どこかにいるようだ。
生えている植物は、名前は分からないけれど見覚えのあるものなので、もしかしたら日本のどこかの島なのかもしれない。(ここで少しホッとする。)
ここまで一通り状況を整理して、パニックになっていた気持ちが少し落ち着いてきていることに気がつく。
そんな時、ここである1つの考えが僕の頭に浮かぶ。
夜が来る前に無人島の全体を把握しておく
もし、現在が時間帯としては昼頃で、かつ季節も今(7月初め)の日本と同じ初夏なのだとしたら、日が沈んであたりが真っ暗になるまでに、あと約6、7時間くらいはかかるだろう。
日が沈んでからでは照らすものが無いので、探索したりするのは難しいし、夜になってから活動する動物ももしかしたらいるかもしれないから、出くわしたらどうなるか分からない。
だから、明るい今のうちに無人島内を歩き回って、どこに何があるのか、どんな生き物がいるのか、暗い不安な夜を越すのにいくらかマシそうなところはないか(正直これが一番切実な気がする)、確認しておいたほうが良さそうだと考えるだろう。
幸いにも、この無人島は暗くなるまでには十分全体を歩き回れそうなほどの大きさのため、あまり急がなくてもよさそうだ。
それに、動いていたほうが、この先どうなるのか分からない不安感や恐怖感に苛まれずに済みそうな気がする。
そうして歩き始めると、同じ無人島でも岩場が多く、勾配が激しいところがあったり、木々がうっそうと生い茂り、森のようになっているところがあったり、砂浜が広がり、比較的なだらかな地形をしているところもあるなどの、様々な発見をするだろう。
木々の生い茂る場所を進んでいくと、奥に川が流れていることに気がついた。
木漏れ日が差し込み、川の透明度も相まってなんとも神秘的な光景だ。
裸足になって少し入ってみると、流れも緩やかで、そこまで水深もないため、体を洗っ
たり、飲水の供給元として、とても重宝しそうだ。
この無人島には人の手が一切入っていないようなので、その姿は真の意味で自然の姿そのものだ。
ポイ捨てされた空き缶やペットボトルなどの人工的なゴミは1つとして存在しない。
ありのままの自然というのはこんなにも美しい。
自分自身で「道」を切り拓いていく
当たり前のことだけれど、この無人島には人の手が加わっていないため、「道」というものがない。
時には草木をかき分けて進んだり、不安定な足場に気を使いながら歩いていかなければならないところもあり、距離の割にとても疲れる。
今まで生きてきた中でも、山や森の中を歩いたことはあったけれど、そこには必ず「道」があった。
ただその「道」は舗装されていたり、砂利が敷かれていたり、そういった状態でなくとも、既に木々が切り倒され、草が刈られ、誰かが通れるような状態になっているからこそ、そこに「道」として存在していた。
この無人島では、「道」はあくまで自分が切り開いて創っていかなければならない。
誰かの通った「道」などないのだ。
そう考えると、今の暮らしの中で無数に存在する「道」を最初に切り拓いた人たちというのは、どれだけ大変な思いをしたんだろう。
とてつもない量の土を掘ったり、盛ったり、岩盤をダイナマイトで爆破したり、重機で山を削ったり、海の底にすらトンネルを作ったり、、、
元々はこの無人島のようだった日本列島が、今やこんなにもたくさんの「道」が創られ、同じ場所へだって何通りもの方法で行くことができるようになった。
「道」を切り拓いた人たちの途方もない労働量と、探究心に驚かされる。
この無人島でその「道」を切り拓けるのは自分だけ。
その「道」を通るのも自分だけ。
そう考えると、感じるのは、無人島に突然1人置かれた不安感や恐怖心だけではなく、自分自身で開拓していく面白さもきっとあると思う。
既に誰かが通ったことのある「道」を通るだけでは感じられない面白さが。
まあ、それを感じるにはもう少しこの無人島生活に慣れなければならないだろうけれど、、、
続く