ある日突然無人島に1人置かれたら ③
ある日、妙な感覚に襲われて起き上がり、目を開くとそこは無人島だった。
そして、当然ながら、自分以外の人間はここには存在しない。
全く不可解だけど、どうやら夢ではないらしい。
さて、もしもこんな時、自分だったらどうするか、、、
ある日突然無人島に1人置かれたら(②からの続き)
サバイバル術を少しでもかじっておけばよかったと後悔する
昼間の探索の時に、動揺の中にも時折感じられていた楽しさも束の間、これからやってくる長くて暗い夜に怯えていた夕暮れ時。
それからの周囲の環境の変化はあっという間で、底知れない不安感を抱えながら考え事をしていると、気づけばあたりは暗闇に包まれていた。
昼間は大きな動物の姿は見られなかったが、もしかしたら夜になってから行動を始めるものもいるかもしれないので、出くわさないように、また、もし出くわしても逃げ回れるように、初日であるこの日は開けた海岸の砂浜の上で過ごすことにした。
幸いにも天気は良いようで空は星がくっきりと見える。
月もあとちょっとで満月になりそうな感じで、やわらかい光を放っている。
そのおかげで、夜になったらあたりは真っ暗で何も見えなくなってしまうんだろうなーと思っていたけれど、意外にも目も慣れて結構はっきりと周囲が見える。
風も穏やかで、暑すぎず、寒すぎず、温度はちょうどいい。
ただその分、昼間は鳴いていた鳥の声がしなくなり、打ち寄せる波の音だけが周囲に響いていた。
とっても静かだ。
まあ、とりあえず、今日はこんな感じで、朝がくるのを待つとしよう。
目覚めてからまだ何も食べていない(水分は川の水を少し飲んだ)けど、空腹感はあまりない。
昼間は歩き回ったので体は相応に疲れているはずだが、疲労感もそこまで感じない。
眠くもない。
きっと、まだかなり気が張っているんだろう。
そりゃそうだ。
普通の日常を送っていた人間が、ある日突然目が覚めたら無人島にいるという、何の関連性もない、ワケの分からない事態の当事者になってからまだ半日も経過していないのだから。
しかも、衣食住に恵まれた暮らしから、一転、ガスも水道も電気もなんにも無い原始人のような状況に置かれてしまったのだから。
焦るし、怖いし、不安になるのも当然のことだ。
ただ、その中で1つ、すごく後悔していることがある。それは、サバイバルの技術に今まで全く関心を持ってこなかったことだ。
前にテレビで、芸能人が無人島で木や石を使って火を起こしている様子や、漂着物などを使って簡単な住居を作っている様子を目にしたことはある。
だけど、その時はバラエティの演出の1つだと思って、細かくやり方を知ろうとは思わなかったし、まさか自分がそんな状況にリアルで置かれるなんて、1ミリも想像していなかった。
だから、僕は火を起こす方法も家の作り方も分からない。
まだ半分夢であってほしいという気持ちもある。
きっと、火のおこし方を知っていたり、実際に木や石を使って火を起こしたことがあれば、それでも大変な思いをするかもしれないけれど、もっと温かくて、明るい環境をつくることができただろう。
獲ってきた魚や拾ってきた木の実などを焼くこともできたかもしれない。
組み立て方を知っていれば、この島に流れ着いてきた流木などを使って、雨風をある程度しのげる空間を作ることができたかもしれない。
その状況に置かれて初めて悔やんだり感じる気持ちがある。
人生ってそんなことの連続な気がする。
まあ、ここまで非現実的なことが起きることを想像するほうが難しいだろうけれど。
ただ、この環境では間違いなく、サバイバル術を少しでも身につけている人間の方が何も知らない人間よりも圧倒的に有利になることは間違いない。
そして、僕はどちらかといえば、後者の「何も知らない人間」の方なのだ。
そんな事を考えながら、ただただじっと、夜の海岸を眺めていた。
日が落ちてどれくらいの時間が経ったかは分からない。
続く